魔女の森

短編

アカツキは男を見つけた。
王国との結界の境目にほど近い、大きな樹の根本だ。
1時間ほど前に生じた結界の歪みの原因であろう。

王国と結んだ不可侵の約束は効力が薄れているようだ。
――面倒くさい。この上なく。

再び結び直さなければいけないのか、とため息をつく。
そのことは後で考えることとして、今は目の前の問題をどう対処するかを考えよう。

倒れた男はときおり小さく震えて何かを呟いている。
王国騎士の衣装をまとって腰には立派な剣。
鍛えられていると分かる体躯から、恐らく彼は騎士なのだろうと想像する。

「ふむ」

この森には侵入者の行動と思考を制御するための魔法を仕掛けている。
その作用は森にいる時間が長いほど強く働いていき、最後にはこの男のように身動きが取れなくなる。
痺れ薬と媚薬を織り交ぜた、他の魔女からは「悪趣味」とも呼ばれた魔法だ。

アカツキは非難を鼻で笑い飛ばした。
特殊な人間は身動きができなくても、思考だけで周囲に働きかけることができる。
そのため、思考を制御するために媚薬を用いている。命を狙われることもある魔女として、念入りな対策は必要だ。現に、滅びていった魔女はいずれもアカツキを非難して笑った者たちばかりだった。

男に近づくと、その手にはこの森にしか生えない薬草が握られているのが見えた。
騎士である彼が薬草探しする理由は分からない。

「おい、お前」

彼の視界に入るように、彼の頭の近くでしゃがみ込んだ。
真っ赤な顔で苦し気な呼吸を繰り返している彼の瞳が震え、視線が捜すように動く。
意識が完全に飲まれたわけではないようだ。
やはり強靭な精神力を持っているのだろう。

「ここは私の森。無断で立ち入り、あまつさえ薬草を盗んでいくなど業腹だね」

頬杖をついて微笑みかける。
男がいい訳するように口を動かすのが見えたが、声になっていない。
涙に濡れた瞳が再び苦し気に細められた。籠った声が空気を揺らし、男の体が揺れる。

「苦しいかい。その作用はこの森を出ない限り、更に強く、お前を苦しめる」
男の目が縋るように見上げてきた。
自分で動くことすらできなくなった体に、今の言葉は絶望でしかないのだろう。

「でもお前は運がいい。1つ、代償を払えばその苦しみを晴らしてやろう。その薬草もくれてやる。魔女と取引するならお前の名前を告げるだけでいい」

ほんの数秒。考える力が残っているかどうかは不明だが、男は震える唇で「レール」と名前を告げた。
先ほどと同じく声は耳まで届かない。
しかし契約を結ぶための魔法陣を地面の下に忍ばせた後のことだったため、その名前ははっきりアカツキの耳に届いた。その瞬間、魔法陣が発動し、倒れた男を頭の先からつま先まで包み込む。

「ぐ、あ、ああっ」

男が体を反らせて喘ぐ。
偽りの名前を告げた場合は魔女の契約によって切り裂かれるが、この場合は違う。
魔法陣の作用によって一時的に彼に掛けられた森の魔法が強く作用し、結果、そもそも昂っていた彼の性が耐えきれずに弾けたのだろう。契約の魔法陣が消えたあと、彼はぐたりと地面に臥して肩で呼吸を繰り返した。

「さあ、レール。体を起こせるか」

頭上から問いかけると、涙が滲んだ金色の目が見上げてきた。
奥歯を噛み締め、反抗的な色を見せるが、黙ったまま言葉に従う。
時折まだ苦しそうな声を洩らしながら地面に座り込んだ。

彼が完全に体を起こす前に、素早く彼の懐に入り込んで抱きしめた。
防具に阻まれて熱は感じない。驚く声を上げる彼と、自分を包ませるように魔法陣を展開させ、素早く転移する。

森の入口から森の奥深く、魔女の住処へ。
転移が完了すると同時に素早くまた彼から離れる。
その反動でレールが地面にひっくり返った。

「な、あっ?」
「代償はそなたの体液じゃ。特殊な調合に必要な材料だが、さすがに私も森を出て王国の男に働きかけるわけにもいかなかったのでな。工面をどうしようと悩んでおったところにそなたが現れた。好都合な男だ」

笑いながら説明して彼を振り返る。
レールは唖然としたような顔をしていたが、反応は関係ない。
充分に動けない彼の周囲に魔法をかけて、空気を圧縮させ、そして彼を持ち上げた。
驚く声が聞こえたが無視をする。住処の隣に建てた工房に彼と一緒に入り、そして鬱蒼とした植物たちの奥に向かう。

「ちょ、っと、待って、魔女殿――」
「何も聞かぬよ。取引の契約は済んだのだ。お前は黙って代償を受けよ」

かき分けた植物の向こう側に、蔦が絡み合ってできた腰かけ椅子がある。
レールをそこに下ろすと、絡み合った蔦が徐々に解けていき、彼の足首や太ももを拘束した。
別の場所から伸びてきた蔦が背もたれのようになり、彼の体を磔にして、固定する。

突然の出来事についていけないのかレールはただ驚きの表情を浮かべてアカツキを見ていた。
あっという間に整った準備。
アカツキは彼の視線を受け止めて笑う。

「私のことを優しい魔女だとでも? 私は自分の目的を果たすだけさ。何しろお前は私の森に勝手に入って来た侵入者なんだからね」

さぁて、と言いながら彼の前に屈み、服を寛げた。懐から中に腕を差し入れると熱い。
先ほど彼を抱きしめたことで防具の存在は分かっている。
手早く防具をほどき、上下共に足元に落とした。ガランガランという音が部屋に響く。

薄くなった服を引き、素肌に触れる。
レールの体が逃げるように動いたが、彼の後ろから伸びた新たな蔦が腰に巻き付いて拘束した。

「んんと。まぁ陰茎が妥当なところか。とはいえ、森の媚薬だけでは薄いな……」

ブツブツ言いながら、かっちり着こまれた服を次々と寛げ、靴も脱がせた。
もちろん腰紐も緩めている。

「鍛えた体だな。絞りがいがありそうだ」
腹の筋肉に触れるとピクピク動いている。
「ま、待て、何をぁあ」
アカツキは腹筋を触った手をそのまま滑らせて脇腹を撫でた。
そこから背中、尻、太ももを撫でる。どこも鍛えられていて、しっかり筋肉がついている。
「魔女殿」
訴えは聞こえていたが、いちいち応えていたのではキリがない。

アカツキの意志をくみ取るように蔦がレールの両足を開かせた。
そこの服を剥ぎ取る。
中心で少しだけ盛り上がるものに手を触れた。

ぎちり、と彼を捕らえる蔓が揺れた。
レールに視線を向けると真っ赤な顔で体に力を入れている。だが彼の力で引きちぎれるほど弱い作りにはしていない。アカツキは視線を戻すと陰茎を取り出した。
先ほど1度、吐き出したおかげで湿っている。さぞや気持ち悪かったことだろう。

先端を撫でると抵抗する声が聞こえた。
それでも、いくら鍛えた騎士であろうと決して抜け出せない拘束と、確実にもたらされる快楽を前に、彼の矜持は崩れていく。熱い塊をぐにぐにと擦り続けると、確実に彼の声色が変わっていくのが分かる。

少しだけ視線を上げると眉根をきつく寄せて苦しそうな表情のレールが見えた。
手を動かすたび反応するのが分かり、思わずアカツキは笑みを浮かべる。
「我慢する必要はない」
うっすらとレールが瞳を開ける。
「むしろ放ってくれねば困るのだ。そなた以外に手に入りそうな当てもない」

少しだけ擦る手を緩めると「ああ」と消え入りそうなため息が聞こえる。
森の媚薬が深いところで作用し続けていたのだろうか。彼の思考はもう行為以外に向けられていない。

両手で彼のものを包んで弄ぶ。
ドクドクと脈打つそれをしっかりと支え、先端を指の腹で何度も強く擽った。
「ああ、あ、それっ」
ヌルヌルとした先走りを伸ばすように擦り付ける。
「ぅあ、あ、あ」
両足を拘束する蔦がギチギチと鳴る。また同時に、腰を振ろうとしたのか引こうとしたのか、彼の腰をつかむ蔦も音を鳴らせる。彼が刺激を逃がすことはできない。
アカツキの中でしっかりと固く膨張し、ほんの少しだけ、アカツキの魔法によって射精を塞がれた彼は喉を反らせて快楽に溺れ、そして最後はアカツキの手に導かれるまま盛大に放った。

アカツキは声を出さずに笑った。ようやく待ち望んだ結果だ。嬉しくて、呆然としているようなレールの頬にキスを贈り、そして素早く魔法を展開させる。変質する前に密閉空間へ送る。
あれは後ほど森の結界を補強する一助になる。手についたものも、レールの陰茎についたものも、残らず送る。それでも、たった一度では足りない。

脳裏で容量計算をしていたアカツキは眉を寄せた。
「のうレール」
一度放ったことで少し落ち着いた様子のレールに話しかける。
見上げて来たレールの瞳はまだ潤んでいたが、こちらの言葉の意味は理解できているようだ。
訝り、警戒心をわずかに見せるレールに、ほんの少しだけ嗜虐心がうずく。

「負担はかけるだろうが、そなたならば回復も早かろう」
眉を寄せるレールに笑みを見せる。
「あと1度――否、もう数度か。足りなければ起きてからも。そなたに提供して貰わねばならぬ」

何を、というのは伝わったのだろう。
ひくっと喉を鳴らしたレールに否は言わせない。

アカツキは先ほど触れていた場所に優しく指を添わせた。

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